田中 悠紀
 
28歳(受験時)
某国立大学法学部卒業
司法書士事務所勤務(受験時)

1.司法書士試験に挑戦するきっかけ
 私は在学中の頃から大学受験指導に従事し,受験生の応援をしてきました。志望校合格 のために一生懸命勉強に打ち込む受験生と接するうちに,「自分も何かに挑戦したい。」と 強く思うようになりました。そこで,自分の限界に挑戦するための試験として司法書士試 験を選びました。理由は,司法書士試験が合格率2%台の難関試験であり,挑戦するとい うテーマにふさわしい試験だったからです。本当は司法試験にも興味があったのですが, 2〜3年の大学院通学という受験資格を得る期間が長く,時間がもったいなく感じました。 それならば2〜3年間司法書士事務所で働きながら司法書士を目指した方が給料も貰えて 実務経験も積めるわけだし,時間的にも経済的にも効率がいいだろうと判断したのです。 働きながら受験生活を送るという点は,私自身の一つのこだわりでした。受験に専念する ことは可能だったと思いますが,受験期間中,社会人としての自分の成長が止まるのだけ は嫌でした。また,私は元々集中力の持続時間が少なく,1日5〜6時間が勉強時間の限 界でした。学生時代,定期テストの前日や大学受験であっても,1日10 時間はおろか8時 間程度の勉強ですらできた経験がなかったため,私が挑むべき限界というのは,限られた 時間の中でどれだけ集中して勉強するかという点にありました。

2.ISISにきめた理由
 入門講座を選ぶにあたり、様々な予備校の案内を取り寄せました。また,インターネッ トを利用し,講師の情報も集めました。多くの情報では,「わかりやすいかどうか」を基準 によしあしを判断していましたが,私にとってはその基準がそのまま当てはまる気がしま せんでした。おすすめされている予備校は,テキストも似たり寄ったりで,「う〜ん…」と いう感じでした。特にテキストは,市販されているテキストと一体何が違うのかがわから ず,講座申込みをする気持ちになれませんでした。
 そのとき,ISISのホームページを見つけました。衝撃を受けました。衝撃を受けた ポイントは2つで,1つはISISが掲げる「短期合格論」の中核と言うべき「完全レジ ュメ方式」です。司法書士試験で重要なのは,とにかく頭の中で膨大な知識を整理するこ とにつきます。そのため,多くの受験生が入門講座受験時に使用したテキストの他,自分 独自でまとめたサブノートや,新たに中上級講座として受講した予備校のまとめテキスト を所持しています。ISISでは最初から最後まで使えることを意識した新しいテキスト の在り方を提言しているのです。「完全レジュメ方式」では,分野別にテキストを編成し, 見開きの2ページで内容を簡潔にまとめられています。特に秀逸な点が,表や図説を利用 し,合格に必要かつ十分な知識がコンパクトに集約されているところでした。
 衝撃を受けたもう1つのポイントは,「講師の嶺先生のアツさ」でした。ホームページを ご覧になるだけでそのアツさは伝わってくると思いますが,司法書士試験に挑戦すること を人生の大きなターニングポイントと捉えてくれている講師です。「人生の中の1,2年, 私と一緒に思いっきり勉強して人生を変えてみませんか?」という一言で,ものすごいモ チベーションが高まりました。

3.ISISでの勉強
 私は,2009 年3 月頃,ISISでDVD の通信講義を申し込みました。勉強方法の通説(?) として,講義を受けたらその範囲で過去問を解くといい,とか言われていますが,それは やりませんでした。まめな性格ではないので,講義と過去問をいったりきたりするのに苦 痛を感じたからです。それならばまずはISISのレジュメに集中しようと考えました。 一気に講義を聴き,その後一気に過去問をやりました。講義は,全部で大体300 時間程度 でしたが,DVD の1.4 倍速機能を使って聴いたので,1日3時間で5時間分の講義の聴講 を毎日続けることに徹しました。復讐は全くせず,どんどん先へ進めていきました。最初 から2回は講義を聴こうと思っていたため,1回目の受講で講義中に板書を写すことはせ ず,内容の理解やイメージを作ることを意識しました。2回目に聴くときは,必要に応じ て板書を書きこみながら進めました。毎日続けた結果,約100 日で2回転させることがで きました。全部終わった時には達成権がありましたが,最初の頃の内容をよく覚えていな かったため,もう50 日かけてさらにもう1周しました。1日たりとも休むことなく150 日 で講義を3周聴き終えたので,かなり自身をつけていました。ここで初めて過去問に挑む わけですが,正直頭が痛くなりました。今までは毎日3時間きっちり勉強した気になって いましたが,講義を聴くなんて楽なもんで,過去問に向き合うのは辛くてしかたがありま せんでした。さらに追い討ちをかけたのが過去問の量の多さで,毎日進めても一向に終わ りが見えず,泣きたくなるような毎日でした。しかし,何度も何度も初心に返りながら, 毎日続けることだけは欠かさずに過去問と向き合いました。過去問を解く→レジュメに戻 る→過去問を解く→レジュメに戻る…という作業を永遠と繰り返しました。2010 年の7月 の本試験では,まだ実力が足りていませんでしたが,2010 の年末頃になると急に力が伸び てくるのを感じました。

4.合格した年の勉強
私は,試験に挑むにあたって意識改革を行う必要性を感じました。何よりも意識したこ とは,司法書士試験は「落ちるのが当たり前な試験である」ということです。過去問をひ たすら繰り返す勉強は,ごく普通な勉強方法な気がしてならなかったのですが, 97%の人 が落ちる試験である以上,普通のことをやっていては絶対に駄目だと考えたわけです。
 司法書士試験を戦いに例えるとして,多くの人が剣を装備して戦いに挑もうとしている とします。みんな剣の技術を向上させようと日々の鍛錬に必死になっているわけです。と ころが,合格者達というのは,実は剣を二刀流で使いましたとか,実は手裏剣で戦いまし たとか,圧倒的に強い人なんかは,剣なんてさっさと捨ててバズーカ砲で一撃でしたとか, 普通でない武器で戦っている気がしたのです。私は,武器で例えるならば,槍が欲しいと 思いました。全エネルギーを槍の一点に集中させ,鋭く尖った槍の一撃で敵を貫くイメー ジがカッコよく思えたし,強そうに思えました。ISISのレジュメは,まさにこのイメ ージにピッタリでした。レジュメの範囲内に知識を絞込み,徹底的に繰返すことにより, 槍の先端を磨き上げようと思いました。
 過去問の演習でも制限時間を設けることにしました。「1日何問」という目標を掲げると, どうしても問題数に執着してしまいそれをこなすことばかり考えてしまうので,制限時間 を中心に考えることで,少ない時間の中でなるべく多くの問題を解かなければならないと いう焦燥感や緊張感を養えた気がします。具体的には,30 分を計り,その時間内で解ける だけ解くようにしました。また,答えを見る時間も30 分を計測していたので,30 分で問題 を解き30 分で答えを見るという1時間1セットが出来上がっていました。答えを見る時間 も制限したことで、すごく効率はよくなりました。民法は30 分で7問前後,午後科目なん かは30 問で15 問前後解いた気がします。相変わらず1日の勉強時間は3〜4時間でした が,それでも1ヵ月以内で全科目1周はたやすかったです。もちろん、演習後はレジュメ で締めます。
 徹底的にやり込んだ結果、私は,本試験の全問題をレジュメの知識中心に解くように解 法をシフトさせることにしました。具体的には,問題の全肢検討は絶対に行わず,できれ ば2肢,通常は3肢の検討のみで答えを出すようにしました。さらに言えば,過去問の知 識や実務の経験による知識もそれなりにあったはずですが,そういったものは封印し,レ ジュメのみで解けるだけ解き,やむ負えない場合に限って他から得た知識を活用するよう にしました。このような解法へシフトした背景として,ちょうどこの頃,「合格者の知識量」 というものを体得している実感があったことが挙げられます。「きっと合格者はこの肢とこ の肢だけを決めてに解答する」という確かな自信がありました。このような解法によって 他校の答練の問題に挑みましたが,概ね午前午後に30 前後の正解数を確保していましたが, そのうちレジュメの知識のみで正解に至れた問題数は26〜27 くらいあったと思います。

4.おわりに
 私は,東京在住でありながら,本試験は福島県で受験しました。2011 年3月11 日の大震 災を受け,自分がやるべきことが何か分からなくなる瞬間がありました。原発で大変なこ とになっている福島の受験生は,不安な気持ちでいっぱいで勉強なんかできず,合格者な んて出ないのではないかと思っていました。せめて福島を始めとする東北の人たちと同じ 想いで勉強をしよう,そして,福島の地から合格者を出して元気になってもらおうと思い, 福島に出願しました。試験直前になると,司法書士試験では普通の受験生が落ちる以上, この普通ではない自分の心理は合格者にふさわしいシナリオだろうと思うようになり,「絶 対合格してやる」というモチベーションへ寄与することとなりました。
 シナリオといえば,私は,この1年間ずっと合格へのシナリオをたどってきた気がしま す。「普通の人が落ちる試験なのだから,普通に人は受からない」ということを意識して以 来,普通とは言えないドラマチックな合格へのシナリオは常に意識しました。レジュメを 徹底的にやり込んで合格したことも,被災地である福島で合格を勝ち取ってきたことも, いずれもシナリオの1つです。つまり,結果的に合格に至ったわけではなく,「想い」が先 にあり,合格することを決めていたということです。自分の能力は自分で決めるし,合格 するかどうかも自分が決めるということです。こうして体験記を書きながら何をどれだけ やったかということを振り返って見ても,結構シンプルで簡単な勉強しかしてない気がし ます。しかし,私が大事だと思っていることは,とにかく毎日続けてきたことです。毎日 毎日「頑張る頑張る頑張る」と心で唱えながら,どんなに苦しい日でも歯を食いしばって 机に向かいました。毎日フルタイムの仕事をしていましたから,勉強は本当に苦しくて涙 をこらえる日々でした。眠くても辛くても,心に炎を灯し,気合いと根性を振り絞って勉 強しました。1日たった3〜4時間の勉強時間ですが,それでも私にとっては限界に挑戦 する日々でした。この勉強の日々は,私の努力のワンシーンとして強く心に残っています し,これがきっと今後の人生も支えてくれるのではないかとすら思います。そして何より, 人生を支えてくれるのは,この努力の先にある合格という事実です。合格の胴上げがどれ だけ自分の人生を支えてくれるのか,それは努力をして合格した者にしかわからないでし ょう。本当に苦しい挑戦になるかもしれませんが,「疲れたなあ」とか言いながら家でビー ルを飲んで横になる毎日よりずっとずっと幸せだと思います。特に社会人の!!「私も頑 張りたい…」という小さな気持ちでもいいので,心の底でそうゆう想いがあるのなら,是 非とも挑戦して欲しいです。気合いと根性で限界の扉をこじ開けましょう。人生の中のほ んの1,2年,思いっきり勉強して人生を変えてみてはいかがでしょう?